ISMS認証取得に係る費用は、多角的に発生することが想定されます。審査費用は必須の費用であり、また、ISMS認証取得ではコンサル利用も一般的で、その際はコンサルサービス利用の費用もかかります。自社の状況に応じてどのような取得が望ましいのか、向いているのかの判断材料を収集する必要があります。
INDEX
ISMS取得にかかる審査費用とは、同審査を実施する審査機関が設定する審査費用により異なります。審査費用は一定ではありません。
例えば、以下のいずれかによっては審査費用の変動が生じます。
・依頼する審査機関
・企業業種
・ISMS取得対象拠点数
・ISMS取得対象従業員数
相場としては、約50万円〜130万円程度が想定されます。
新規取得の場合においては、維持・更新とは異なり、2段階の審査があります。
「第1段階審査費用」「第2段階審査費用」それぞれの審査費用が発生しますので注意が必要です。それぞれの審査費用は維持・更新審査費用の2倍〜3倍程度です。
ISMS認証取得にあたり、外部コンサルタントへの依頼を実施する場合に発生する場合は、その費用も想定する必要があります。
こちらも審査機関費用と同様に、各コンサルティング会社によって異なります。
平均的には、コンサルティング費用は約数十万円より数百万円になると想定されます。
なぜ費用差が発生するかというと、コンサルティング会社ごとにサービス内容が異なる場合が多く、サービスプランによって、受けられるサポートの大小があるからです。
例えば、ISMS取得にあたっての必要文書構築のためのアドバイスのみだと費用が低めに設定されることが多いですが、全体的な運用のアドバイス、作業サポートなどを含む場合は、高めの金額が設定される傾向があります。
ISMS認証取得後に毎年訪れる定期的な審査の概要とかかる費用について解説します。
運用時におけるISMS審査の体系は以下の2点です。
ISMS取得を試みるにあたって、外部コンサルタントを利用するか否かを迷うことがあると思いますが、自社のみでの自力取得も十分に可能です。
よって、利用するか否かは以下のような事情を考慮した上で決定することが通例です。
・ISMS認証取得までの工数を削減したい
・早くISMS認証取得を完了したい
・自社にはISMSを構築できるだけのリソースが存在しない
コンサルティング費用については大きく以下のような2点に分けられます。
それぞれのコンサルティング会社の対応スピードについては以下のイメージです。
サービスについては、以下のような4つのパターンが例として挙げられます。
コンサルティング会社の会社規模によっては認証取得にかかるトラブルや遅延につながるようなリスクも考えられます。
いわゆる数名程度の小規模なコンサルティング会社の場合にはキャパシティの問題から、そういったトラブルにつながる可能性があるため考慮が必要です。
ISMS認証を取得すると、社内及び対外的なメリットがあります。
ISMS認証取得において、情報セキュリティに関するルールの作成や社内周知を実施するに伴い、従業員の情報セキュリティ意識の向上を図ることができます。
ISMS認証取得することで、関係先に対してISMS認証所持のアピールにより信頼度が向上します。
自社内にて情報セキュリティ保護について確実に取り組んでいるというアピールになります。
ISMS認証は、情報セキュリティ管理を仕組化し、確実な運用を促進させることが可能なため、情報セキュリティリスクが低減されます。
特に、ISMS認証の運用項目の主軸でもある“情報資産リスクアセスメント”を実施するにあたり、企業にて取り扱う情報資産又はサービス等に関する情報セキュリティリスクについての分析及び改善対応が可能であり、情報セキュリティリスク低減への貢献を期待できます。
ISMS認証を取得するメリットがたくさんある一方、デメリットも存在します。
・ISMS認証は3年サイクルでの運用となり、毎年訪れる定期審査又は3年ごとの更新審査に向けて確実な運用を実施する必要があります。そのため、認証維持のための業務が増加します。
・本コラムでもいくつか解説しましたが、ISMS認証取得にあたって、審査費用やコンサルティング費用がかかります。
コンサルティング費用はコンサルサービスを利用する場合にのみ発生しますが、審査費用については毎年、審査時の費用として発生します。
・ISMS認証運用を実施するからには、運用のためのマニュアル、手順、標準類が追加で必要になるというのが通例であり、それにより管理すべき文書類が増加する可能性があります。
ISMSとはそもそもどんなものなのでしょうか。
ISMSとは、Information Security Management Systemの頭文字をとった略称で、日本語で「情報セキュリティマネジメントシステム」という意味です。情報セキュリティ保護を目的としてマネジメントシステムのことを指します。
情報セキュリティを構成する要素は以下の3点です。
① 【機密性】
② 【完全性】
③ 【可用性】
【機密性】とは、アクセス権を許可された者のみが情報使用等を行えるよう制限することです。
【完全性】とは、情報の内容が正確かつ最新であることです。
【可用性】とは、必要な情報を常時使用できる状態に保全しておくことです。
「JIS Q 27001」又は「ISO/IEC 27001」は、ISMSに取り組む時の要求事項を定めた規格です。
情報セキュリティマネジメントを行うための明確な基準として設定されており、これらに準拠したISMS運用を自社にて実施することが必要です。
※JIS Q 27001:日本語訳版、ISO/IEC 27001:国際規格版
ISMSとプライバシーマークの相違点について紹介します。
① 規格の違い
対象となる規格は以下のように異なります。
プライバシーマーク:JIS Q 15001適合認定制度
ISMS: JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)
② 審査の違い
審査の違いとしては、主に難易度や範囲が異なります。簡単に列挙したものが以下です。
●プライバシーマーク
①審査時に「狭く・深く」見られる
②個人情報保護を基準に平均的なリスク対策が必要
③組織全体で認証
④審査機関すべて価格が同じ=競争原理なし
⑤ 審査が1日で終わる
⑥ 審査は従業員のみが立会可能
●ISMS
①審査時に、「広く・浅く」見られる
②リスクに応じて対策が打てる、ルールに自由度有
③認証範囲を選べる(全社・事業部・拠点等)
④審査機関すべて価格が違う=競争原理ある
⑤審査日数が対象人数に応じて変わる
⑥コンサルタントの審査立会が可能
③ 業界・市場の違い
それぞれの規格にて業界・市場が大きく異なるわけではないですが、主にプライバシーマークにおいては、個人情報をより多く取り扱うを可能性のある人材派遣業界、士業、EC業界等での取得が多いというのが特徴であり、ISMSは幅広い業界にて取得されています。
ISMSとISO27017がよく比較されることがあります。それぞれISO規格であることに違いはありませんが、建付けを簡単に見ていきましょう。
まず、ISMSについては前述してきた通り情報セキュリティマネジメントシステムを扱う規格であり、ISO27017は少々特別な規格となっています。
ISO27017はクラウドサービスセキュリティに特化したマネジメントシステムで、クラウドサービスを提供又は利用している企業が取得可能なものです。ISMSとは似て似つかない部分もありますが、基準はISMSとなり、その上にISO27017が成り立っています。
よって、基準はISMSのため、ISO27017を取得するにはISMSとの同時取得が必要であり、ISO27017単体での取得はできません。
ISO27017を取得するにはISMSとの同時取得が必要であり、ISMSを先に取得しておくか、同時取得をするかのどちらかになります。
この同時取得の理由としては、ISO27017の位置づけが“アドオン規格”とされており、ISMSへの追加規格であるからです。
ISMS同様に、ISO27017取得にあたっても審査費用の負担が発生します。ISMS費用への上乗せとなり合算費用での審査を実施します。
ISO27017の適用範囲は、ISMS(ISO27001)と同一か、ISMS範囲内です。
ISMSとISO27017の対象組織・対象拠点・対象部門は同一か、ISMSの範囲にISO27017が包括されている状態にしなければいけません。
ISMSと同時審査実施です。
例外的に、ISO27017のみ別日での審査も可能ではありますが、費用や工数が増加する等推奨はできません。
ISMS取得にあたっての費用面や自力取得にあたってのポイントは以下3点です。
① 審査費用は審査機関ごと又は組織ごとに異なり、審査種別ごとにも異なるため確認が必要。
② ISMSの自力取得は可能。外部コンサルタントに依頼する場合にはメリット・デメリットがあること。
③ 外部コンサルタントについてもサービス体系が異なるため、選別が必要であること。
ISMS取得企業は年々増加し続けており、これを機に情報をキャッチし、差別化を試みてください。
取得におけるサポートについては当社も実施しておりますため、お困りの際にはぜひお声がけください。
このナレッジの監修者
結石 一樹 KEISHI KAZUKI
株式会社スリーエーコンサルティング 執行役員。
ISO・ISMS・Pマークに関するコンサルティング歴10年、担当企業数380社以上。
大手企業や上場企業のサポート経験が豊富。
効率的で効果的な認証取得はもちろん、運用のマンネリ化や形骸化、ダブルスタンダード化などの問題解決に日々取り組んでいる。