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ISO9001の要求事項と品質マネジメントシステム(QMS)について徹底解説!

ISO9001の要求事項に則って品質マネジメントシステムを適切に運用し、会社の仕組みづくりをすると、顧客満足度を向上させることができるようになります。ISO9001の認証により、売り上げを伸ばしている企業が増えています。

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1.ISO9001とは

ISO9001とは、国際標準化機構による品質マネジメントシステムの国際規格(ISO)で、企業が顧客満足度を高め、法令遵守を確保し、継続的な改善(PDCAサイクルを回していく)を行うための仕組みづくりの標準です。

これに準拠することで、製品やサービスの品質を改善し、ISO9001というマークによるビジネスの信頼性を向上させることができ、最終目的である顧客満足を向上させることができます。

⑴品質マネジメントシステム(QMS)について

品質マネジメントシステム(QMS)というのは、上記の“ISO9001とは?”にも出てきましたが、企業が売り出す製品やサービスについての品質を管理・監督、向上させる仕組みのことを言います。

つまり、品質を管理・監督、さらには向上させて、顧客が満足するような製品やサービスを売り出して、顧客満足を得たり、向上させたりするための仕組みです。

知識など何もない状態で品質を向上させようとしても簡単には難しいです。

できたとしても、継続的な改善にはつながらないことがほとんどです。
この継続的な改善を可能にしたのがISO9001の品質マネジメントシステムということなのです。

また、ISO9001以外にもISO規格はたくさんあります。代表的なものが、ISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)、ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)などです。
どれもテーマが違うだけで、基本的な改善システムというアプローチは変わりありません。

⑵QMSとEMSの違い

数あるISO規格の中で、それぞれの違いというのはどんなところにあるのでしょうか。ISO9001(QMS)とISO14001(EMS)の違いを例に説明します。

この二つは、いろいろな工場でよく目にしたことがあるのではないでしょうか。

この二つがセットで取られるようになった経緯まではわかりませんが、最初は品質のQMSだけだったところ、環境問題が世界中で課題と認知されるようになり、EMSの取得が増えていきました。
QMS(ISO9001)とは、「Quality Management System」
EMS(ISO14001)とは、「Environmental Management System」
それぞれの頭文字をとって、ISO9001はQMS、ISO14001はEMSと、略称で呼ばれるようになりました。

どちらも“改善を行うための仕組み(システム)”ということには変わりがありません。
明確に違うのが、“品質”なのか“環境”なのかというところです。

テーマが違えば改善のアプローチ方法が変わるので、改善のフローも変わりますが、基本的な改善の仕組みである「PDCAサイクル」は変わりがありません。

⑶要求事項とは

ISO9001だけでなく、ISOには要求事項というものがあります。

改善の仕組みづくりを行うための大事なものとなります。

要求といわれると、これやりなさい。あれやりなさい。と決まっていそうですが、ISOはどのような組織にも受け入れやすいように、あえて「こういうことをやってください。細かいルールは組織・企業に任せます。」というような形で書かれています。(もともと英語を日本語に訳しているので、要求事項という言葉を使われてしまっています。)

この要求事項に沿って、組織・企業は自分たちのルールを作っていくこととなります。

ISO9001の要求事項は、現在では、「ISO9001:2015」と「JIS Q 9001:2015」があります。
ISOが英語版であり、JIS Qが日本語版です。

また、“:2015”となっているのは、2015年に改訂版が発行されたからです。次に改訂版が発行されると、2015が発行されたその年の年数に変わります。

2.ISO9001の要求事項で求められていること

ISO9001の要求事項では、改善のサイクル(PDCAサイクル)を構築し、運用することが求められています。
(要求事項の項目の解説は、次の項目で記載しています。)
次の①〜④が、ISO9001のPDCAサイクルの概要です。
要求事項とPDCAサイクルの関係性についてもご確認ください。

①品質目標の設定
P:Plan(プラン、計画)の一つになります。どんな目的で、その目的を達成するためにどんな行動目標にするのかを計画します。

②設計・製造
D:Do(ドゥー、実行)の一つになります。設計・製造・サービス提供を行うための計画を立てた後に、その計画通りに実行します。

③分析・マネジメント評価
C:Check(チェック、評価)の一つとなります。計画を立てて実行をしたら、計画と通りに実行ができたのかどうかを自分たちでチェックを行います。できているところと、できていないところを見ます。

④改善
A:Action(アクション、改善)です。チェックして、できていなかったところを改善します。改善を行ったら、また次のPlanから始めていき、継続的な改善を行います。

3.ISO9001要求事項の項目

ISO9001の規格要求事項が書かれた冊子(もしくはデータ)は、日本規格協会のWeb販売サイト「JSA GROUP Webdesk」から購入可能です。
ISO9001要求事項の大項目は、以下の1~10で構成されています。

1.適用範囲
ISO9001をどの部署に適用を行うのかを決めます。全社で取得することも多いですが、工場単位や製造等にかかわる部署のみで取得することもあります。

2.引用規格
「ISO 9000:2015」と「JIS Q 9001:2015」と「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム−基本及び用語」がマネジメントシステムを構築するうえで引用するべきものとなります。

3.用語及び定義
基本的には、「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム−基本及び用語」に載っているものとなりますが、組織独自の言葉を決めてもよいです。
例えば、「トップマネジメントを代表取締役社長とする」、などです。
(トップマネジメントとは、適用している範囲内のISOの最高責任者のことを指します。)

4.組織の状況
組織・企業の現在の状況を洗い出すための要求事項です。組織・企業の現在の課題は何か、顧客や従業員から品質を向上するために何を求められているのか、などを洗い出します。

5.リーダーシップ
ここでは、トップマネジメントが担うべき役割を記載しています。マネジメントシステムを回すための役割を従業員に任命したり、品質方針を決めたりします。

6.計画
ここでの計画は、全体のマネジメントシステム(PDCAサイクル)を回すための計画をたてる必要があります。内部監査はいつ頃やるのか、マネジメントレビューはいつやるのか、といった計画を立てます。

7.支援
支援というのは、マネジメントシステムを回すために必要は資源のことを指します。主に人員や設備に関する内容となっています。業務をする上で従業員に必要なスキル・力量を持たせるための教育計画や設備を故障なく使用するための計画などです。

8.運用
ここまで来たらようやくPDAAの”Do”になり、業務をどのように行うのか計画し、実行していきます。もちろん、品質を担保するためのチェックは要所要所に入ります。

9.パフォーマンス評価
マネジメントシステムがしっかりと機能したのかどうか、計画通りに事を進めることができたのかどうかを、自分たちでチェック・評価します。顧客満足を調査・分析したり、内部監査というものを実施します。内部監査では、自部署を見ないように客観性を持った監査を実施します。内部監査員は社内の講義を受けたり、外部研修を受けて勉強を行い、内部監査ができるように事前に準備しておきます。

10.改善
不適合が見つかった場合に改善策を立てて同じ間違えが起きないようにします。

4.ISO9001を取得する目的

ISO9001を取得する目的は、企業によってさまざまですが、以下のような理由が多いです。

⑴品質の保持

顧客に満足してもらうために、サービスや製品の品質を保持することを目的に、ISO9001を取り入れる場合があります。

⑵官公庁案件の入札加点

官公庁案件の入札で、加点や条件として設けられていることが多いです。入札を有利に進めるため、ISO9001を取得して組織や企業に付加価値を与えます。

⑶顧客満足度の向上

(1)品質の保持とつながっていますが、品質保持・向上を行い、顧客満足度を向上させるために取得します。

⑷取引先からの要求

(3)顧客満足度の向上と似ていますが、取引先・顧客からの取引の条件として求められることがあります。

⑸会社の信頼性向上

ISO9001を取得している会社として、ブランドの価値が上がります。会社の信頼性を上げるためにISO9001を取得することもあります。

5.ISO9001が「意味がない」と言われる理由

ISO9001を取得するメリットは多いのですが、取得する意味があるのか、という疑問の声があることも事実です。以下の内容が、ISO9001は意味がないのでは、と企業が考える所以です。

⑴ISO9001のための活動が多い

ISO9001では、業務外のことでやらなければいけないことが負担となっていることがあります。

例えば、内部監査を実施しなければなりません。

業務のチェックを行うことは品質向上にとっては大事なものですが、ISOの要求事項のためのチェックをしなければなりません。

その量はとても多いので、社内の内部監査員の負担は膨大です。

また、マネジメントレビューの実施も必須です。業務に関する報告をトップに行うことは重要な位置づけですが、内部監査と同様に、ISO要求事項に関することも報告内容として含まれているので、ISOのマネジメントレビューを行うためだけの時間が必要となってしまいます。

⑵審査を通過するためだけになっている

長期に渡ってISOを認証している組織・企業に多い悩みです。企業として、顧客満足もしていて、品質も向上できている。

その上で、ISOは「取引条件として求められている訳ではない」場合、審査を通すためだけのものとなってしまいがちです。

6.ISO9001を取得している業種

主にISO9001を取得している業種として以下が挙げられます。業種ごとのISO9001取得理由も合わせて記載しています。

⑴製造業

製造業での取得理由は、取引先・顧客からの取引条件でISO9001が必要となることがほとんどです。

やはり、モノづくりというのは不良品が出てしまうと大きな問題に発展しやすいです。

車を例に挙げるとわかりやすいです。エアバックの品質不良により、自動車本体の売り上げが下がってしまいます。

それを防ぐために信頼できる委託事業者を探します。ISOを取得しているかどうかは、事業者を探す際のわかりやすい条件となります。

⑵建設業

建設業では、取引条件ということは少なく、ほとんどが入札加点や条件になっています。

特に、建設業の中で、土木工事に関するものが官公庁の仕事として入札に出されます。道路整備などは、延々と続く仕事ではないでしょうか。

⑶サービス業

製造業、建設業、サービス業の3つの中では、サービス業はISO9001の取得数が少ない業種ですが、サービス業では、製造業と同じく、取引先や顧客からの取引条件として要求されることがほとんどです。

最近では、IT関連のシステム開発で求められることが多いようです。

7.ISO9001の取得方法と流れ

⑴取得に向けた準備

まずは、どのようにマネジメントシステムを構築していくのかを考える必要があります。

自力で構築するのか、コンサルサービスを利用て構築するのか、選択によって、取得の期間や予算は変わります。

自力で取得する場合は、コンサル費用が抑えられる代わりに、自分たちで一から勉強してマネジメントシステムを構築しなければならないので、取得までの時間が長くかかります。目安は1年~2年ほどです。

逆に、コンサルサービスを入れて取得をすると、コンサルの内容にもよりますが、取得までの期間はかなり短くなります。

目安は最短で6か月程度です。ただし、コンサル費用がかかるので、予算の確保が必要です。
また、この時点でISOを認証するための審査機関の目星をつけておくとよいでしょう。

⑵品質マネジメントシステム(QMS)の構築

準備を行ったら、品質マネジメントシステム(QMS)を構築します。

コンサルを使った場合は、コンサルと相談しながらどのようなルール作りを行うのか、決めます。

⑶品質マネジメントシステム(QMS)の運用

マネジメントシステムを構築したら、マニュアル等が完成します。

それに従って、マネジメントシステムの運用を開始し、マネジメントレビューまで行います。

⑷ISO審査機関による審査

(3)品質マネジメントシステム(QMS)の運用を行う頃でよいですが、ISO審査機関による審査を行う日程の調整を行います。

マネジメントレビューが完了する時期を見て、審査日程を調整し、審査に挑みます。

⑸認証取得完了

審査が終わり、審査時の指摘が改善されたら認証取得となります。

8.まとめ

ISO9001の要求事項と品質マネジメントシステムについて解説を行いましたが、ISOの要求事項はまだまだ奥が深いです。

ISO9001をうまく活用できれば品質向上、顧客満足向上を行うことができる仕組みとなっています。

確かにISOのためだけの活動があるので負担は増えてしまうかもしれませんが、一つの改善の仕組みとして取り入れることは組織・企業にとってプラスになるのではないでしょうか。

取得を検討してみてはいかがでしょうか。お悩みの際は、ISO NEXTにお気軽にご相談ください。

監修者

このナレッジの監修者

結石 一樹 KEISHI KAZUKI

株式会社スリーエーコンサルティング 執行役員。
ISO・ISMS・Pマークに関するコンサルティング歴10年、担当企業数380社以上。
大手企業や上場企業のサポート経験が豊富。
効率的で効果的な認証取得はもちろん、運用のマンネリ化や形骸化、ダブルスタンダード化などの問題解決に日々取り組んでいる。