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突然の「EHS監査」通知に慌てない! 基礎知識と企業が取るべき対応策

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「EHS監査」という言葉を聞いたことはありますか? もしかしたら、ヨーロッパの取引先企業から突然、「EHS監査を実施します」という連絡が来て、対応に困っているという方もいらっしゃるかもしれません。

簡単に言うと、会社が環境(Environment)、衛生(Health)、そして安全(Safety)に関するルールを守って、従業員が健康かつ安全に働ける環境を整え、地球に優しく事業を行っているかをチェックすることです。

なぜ今、このEHS監査が重要になっているのでしょうか? そして、もしあなたの会社にEHS監査の通知が来たら、一体何をすれば良いのでしょうか? このコラムでは、これらの疑問について解説していきます。

1. EHS監査とは? なぜあなたの会社に関わるのか

EHS監査とは、企業が事業活動を行う上で、環境(Environment)、衛生(Health)、安全(Safety)に関する様々なルールや基準をきちんと守っているかどうかをチェックする活動のことです。

(1) 環境(Environment)

これは、事業活動が地球環境に与える影響を最小限に抑えるための取り組みです。例えば、工場の排水が適切に処理されているか、有害な化学物質が安全に管理されているか、省エネルギーに努めているかなどがチェックされます。

(2) 衛生(Health)

こちらは、従業員の健康を守り、衛生的な労働環境を維持するための取り組みです。例えば、作業環境における有害物質の濃度管理、適切な換気、騒音対策、従業員の健康診断の実施状況、メンタルヘルスケアへの配慮、感染症対策などがチェックされます。職場での健康障害を未然に防ぐことが目的です。

(3) 安全(Safety)

これは、従業員を労働災害から守り、安全な作業環境を確保するための取り組みです。例えば、工場で危険な機械が安全に使えるようになっているか(安全装置の設置、定期点検など)、従業員が適切な保護具を着用しているか、危険な作業手順が定められ遵守されているか、火災や爆発などの事故防止対策が取られているかなどがチェックされます。

2. EHS監査通知が来たら、まず何をすべきか

ヨーロッパの企業からEHS監査の通知が届いたら、まず落ち着いて通知の内容をしっかりと確認することが重要です。初期対応の遅れや誤りは、その後の準備に大きな影響を与える可能性があります。

(1) 通知内容の詳細な確認と理解

単に日程や監査範囲を確認するだけでなく、監査の目的、使用される基準(例:ISO規格のバージョン、取引先独自のガイドラインなど)、求められている文書の種類、事前の質問事項などを細かく確認します。

不明な点があれば、遠慮せずに通知の発信元に問い合わせを行い、疑問点を解消しておくことが重要です。監査の目的を正確に理解することで、準備の方向性を定めることができます。

(2) 担当部署と担当者の明確な決定と役割分担

EHS監査は複数の部門にまたがる可能性が高いため、責任部署を明確にし、各部門の担当者を指名します。

担当者には、監査対応の責任範囲、期日、必要なリソースなどを明確に伝え、スムーズな連携体制を構築します。例えば、環境部門が環境側面、安全衛生部門が労働安全衛生側面、情報システム部門がセキュリティ側面を担当するなど、専門性に応じて役割分担を行うことが効果的です。

(3) 社内全体への迅速かつ丁寧な情報共有

監査の実施決定を、経営層を含む社内全体に迅速に伝達します。監査の重要性、目的、スケジュール、各部門や従業員に求められる協力内容などを丁寧に説明することで、社内全体の意識を高め、協力体制を醸成します。説明会を開催したり、社内メールや掲示板を活用したりするなど、効果的な情報共有の方法を検討しましょう。

(4) 現状の自己評価(ギャップ分析)の徹底的な実施

通知に記載されている監査基準と、自社の現状のEHS管理体制や運用状況を詳細に比較分析します。過去の監査結果、内部監査の記録、日々の業務記録、関連法規制の遵守状況などを洗い出し、基準との差異(ギャップ)を特定します。

このギャップ分析を徹底的に行うことで、監査で指摘される可能性の高い項目を事前に把握し、重点的に対策を講じることができます。必要に応じて、外部の専門家の意見を求めることも有効です。

3. 監査本番に向けての準備

自己評価の結果を踏まえ、監査本番に向けて具体的な準備を進めていきます。この段階での準備の質が、監査の結果を大きく左右します。

(1) 詳細なチェックリストの作成と徹底的な見直し

監査基準の要求事項を網羅した、具体的で実践的なチェックリストを作成します。

既存のチェックリストがある場合でも、今回の監査の目的や範囲、最新の基準に合わせて内容を見直し、必要に応じて修正や追記を行います。

チェックリストは、単なる確認項目だけでなく、関連する証拠書類や担当部署などを紐づけて管理することで、監査当日の対応がスムーズになります。

(2) 関連文書・記録の体系的な整理

監査で確認される可能性のある、環境方針、衛生管理規程、安全管理規程、リスクアセスメント結果、健康診断結果の管理記録、作業環境測定記録、安全教育訓練記録、測定データ、過去の監査報告書、法規制遵守に関する記録など、あらゆる関連文書や記録を体系的に整理しましょう。

(3) 従業員への効果的な教育と訓練の実施

監査の目的、重要性、監査の流れ、そして各従業員が果たすべき役割について、理解を深めるための教育と訓練を実施します。特に、監査官から直接質問される可能性のある現場の従業員に対しては、自社のEHSに関する取り組みやルール、緊急時の対応などを具体的に説明し、自信を持って回答できるように準備しておくことが重要です。模擬質問などを取り入れるのも効果的です。

(4) 実践的な模擬監査の実施と改善点の洗い出し

本番の監査を想定し、社内の担当者だけでなく、可能であれば外部の専門家にも協力してもらい、模擬監査を実施します。実際の監査の流れに沿って、文書レビューやインタビュー、現地視察などを行い、本番さながらの緊張感の中で問題点や改善点を見つけ出します。模擬監査の結果は、速やかに社内で共有し、改善策の検討と実施につなげます。

(5) 特定された不適合箇所への迅速かつ確実な改善策の実施と証拠の記録

自己評価や模擬監査で特定された不適合箇所については、根本原因を分析し、再発防止策を含む具体的な改善計画を策定し、速やかに実行します。改善の実施状況は、写真、記録、報告書などの客観的な証拠として記録しておき、監査官に提示できるように準備しておきます。改善策の実施状況は、監査官からの信頼を得る上で非常に重要です。

4. 監査当日とその後の対応

いよいよ監査当日です。準備してきたことを活かし、冷静かつ誠実に対応しましょう。

(1) 監査官への丁寧な受け入れとスムーズなオリエンテーション

監査官が到着したら、受付担当者は速やかに担当部署に連絡し、担当者は丁寧に出迎え、会議室など適切な場所に案内します。監査の目的、スケジュール、社内のルール(安全に関する注意事項など)を改めて説明し、質疑応答の時間を設けます。監査官がスムーズに監査を開始できるよう、必要な情報を提供し、協力的な姿勢を示しましょう。

(2) 監査への積極的な協力と誠実な対応

監査官からの質問には、曖昧な表現を避け、正確かつ誠実に回答します。理解が難しい質問に対しては、遠慮せずに質問し、認識のずれがないように努めます。必要な文書や記録の提示を求められた場合は、速やかに対応し、可能な範囲で詳細な説明を加えます。もし、その場で回答できない質問があった場合は、後日改めて回答することを伝え、速やかに確認して回答するようにしましょう。

(3) 現地視察への適切な同行と的確な説明

工場や事業所などの現地視察には、関連部署の責任者や担当者が必ず同行し、監査官の質問に的確に答えるとともに、現場の状況や実施されている対策について具体的に説明します。安全に関する注意事項を遵守し、監査官のペースに合わせて案内します。

(4) 指摘事項の正確な記録と迅速な確認

監査中に監査官から口頭や書面で指摘された事項は、担当者が詳細に記録します。指摘内容、日時、監査官の名前などを正確に記録し、その場で内容を確認することで、認識のずれを防ぎます。指摘事項の内容が不明確な場合は、遠慮せずに質問し、明確にしておくことが重要です。

(5) 監査後の結果報告とフォローアップの徹底

監査終了後、監査官から監査結果の概要や指摘事項の説明があります。説明内容をしっかりと理解し、不明な点は質問して解消しておきます。正式な監査報告書が提出されたら、内容を精査し、指摘された不適合事項や改善提案に対して、具体的な改善計画を作成し、実施します。改善の進捗状況は定期的に確認し、必要に応じて監査官に報告します。監査で得られた教訓を活かし、EHS管理体制の継続的な改善に努めることが重要です。

5. EHS監査でお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください

もし、突然EHS監査の通知が来て、何から準備を始めたら良いかわからないといったお悩みを抱えていらっしゃるようでしたら、ぜひ当社のコンサルティングサービスをご検討ください。

当社では、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。チェックリストの現状把握や、対策案の提案、他社事例の提供も可能です。

ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。お客様の状況に合わせて、最適なプランをご提案させていただきます。

監修者

このナレッジの監修者

結石 一樹 KEISHI KAZUKI

株式会社スリーエーコンサルティング 執行役員。
ISO・ISMS・Pマークに関するコンサルティング歴10年、担当企業数380社以上。
大手企業や上場企業のサポート経験が豊富。
効率的で効果的な認証取得はもちろん、運用のマンネリ化や形骸化、ダブルスタンダード化などの問題解決に日々取り組んでいる。