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スペシャル対談 ISO運用を成功させるためのヒント
池本 克之
経営者として2度の上場経験を持ち、複数の会社を経営した経験を活かし、現在は組織学習経営コンサルタントとして、大企業から創業間もないベンチャー企業まで幅広い企業の業績向上や企業文化の発展に向けたコンサルティングを行う。数々のビジネス書を著作。
結石 一樹
ISO新規取得および運用のコンサルティング歴10年、担当企業数380社。大手の企業や上場企業のサポート経験が豊富。
効率的で効果的なISO取得はもちろん、ISO運用のマンネリ化や形骸化、ダブルスタンダード化などの問題解決に日々取り組んでいる。
従業員へ浸透しない、形骸化している、社内統制が効かない・・・
ISOの運用で発生する様々な課題をどう解決するか
池本
ISOのみならず、経営方針を設定する場面なんかでも発生するお悩みですね。
それは、価値観のズレから発生しているんだと思います。
人間誰しも価値観を持っています。物事の判断基準とか良し悪しとか好き嫌いとか。肉が好きか魚が好きかとか、犬派か猫派かとか。(笑)全部価値観ですよね。
まずは社長と従業員の価値観のズレを認識するところから
池本
経営者と新入社員では、もちろん価値観はちがうでしょう。そもそも価値観のズレがあるのに、社長の一存で決めたミッションを従業員が理解して行動するなんて、無理があると思いませんか?
この状況を解決するには、策が2つあると考えています。
まずは、
①ミッションを作る段階で従業員を参加させて巻き込む
ということです。
人が決めたミッションを一方的に「やりなさい」と言うと反発が出てくるだろうが、自分で決めると受け入れやすくなるという心理を使います。ミッションを策定する会議に参加させたり、アンケート形式で広く意見を聞くこともできるでしょう。
しかし、巻き込んで作っても価値観は一致しない、言ってることが通じないという状況は出てくると思います。そんな時は、
②価値観のズレがなぜダメなのか繰り返し丁寧に教える
しかないでしょう。
極端な話かもしれませんが、例えば、医療系のサービスにおいて「ちょっとくらいズレててもいいじゃん」とか「ちょっと多くても/足りなくてもいいじゃん」っていうのは絶対NGですよね。人の命に関わるケースもあると思います。
同様に、ズレがNGなのには理由がありますよね。その理由を繰り返し丁寧に教えていく必要があるでしょう。
結石
ISOでは、ミッションの他にも品質方針を定めないといけないのですが、これもインターネットに落ちているようなよくある文言が貼られている会社があります。ISOの担当者だけで勝手に決めているケースも多いですね。
池本
そういうのは、お題目にすぎないですよね。従業員から「よく分からないけど、また何かやってるらしい」と言われてしまう。
結石
ISOをうまく活用している会社さんは、ISOをESG経営などと紐づけて運用できています。そもそも本来会社で行うべきことにうまく絡められている。
一方で、ISOだけが単独で動いてしまっている、審査のためだけのISOになってしまっている組織も多く、このギャップが埋まらず解決せず悩んでいて弊社に相談くださるケースもよくあります。
池本
学校の校則ってあるじゃないですか。生徒手帳に書いてあって、着るものや髪の長さなんかが細かく書かれていたりして。違反すると生徒指導の先生から怒られたなんて記憶がある方もいると思うんですけど。
結石
ありましたね。校則。
池本
別に髪が少し長くても、着るものがルールから外れていたとしても、勉強はちゃんとしますけどって感じですよね。
ただ、最近は、校則を自分たちで決めるっていう学校もあるらしいです。
すごいですよね。生徒全員が集まるのが難しい場合は、全員が集まるのではなく、各クラスの代表がクラスの意見を持ち寄って決めていく。巻き込みですね。そういうプロセスをふんだ校則は守られやすい。
誰が決めたのかも知らない、何十年も前に決まった古い校則を一方的に押し付けられるというのは、企業の経営で言うと、トップダウンなんですよ。受け取ったほうからすると、いつ決まったのか、なんで決まったのか、守ることでどんないいことがあるのか、全く分からない。
ISOのミッションや方針においては、守らなかったところで大きなペナルティはないですし、守る意味がないですよね。「見たことありません」「知りません」となっても仕方ないです。
昔はそれでも良かったかもしれないけど、今はもうそれだけでは人は動かない。だからといって全てをボトムアップにするのも時間がかかります。例えば、1,000人の従業員の意見をひとつにまとめるなんて無理ですよ。ただ、全員が集まって議論をする、というプロセスが大事なんですよね。
結石
参加することが大事なんですよね。
池本
自分が少しでも決めるプロセスに関わったとなれば従いやすいでしょう。つまりは、トップダウンだけではだめ。ボトムアップは時間がかかりすぎる。トップダウンとボトムアップをうまくミックスして組み合わせる。トップの意見は決まっているんだけど、いったん巻き込むプロセスを経て合意で決まった形をとることが大事ですね。
結石
お客様のみならずうちの会社でも、もっと従業員がプロセスに参加する形にしていきたいです。
池本
また例えになりますが、子供の教育でもそうですよね。親としては、「習い事は〇〇をやらせたい」とか「〇〇大学に行ってほしい」という希望があるかもしれませんが、一方的に押し付けるのではなく選択肢のひとつとして提示して最終的には本人に選ばせるのがいいと思います。
つまり、社長のノリと勢いに周囲が合わせていられるうちはいいですが、これからの企業活動や経済を考えると、根幹となる価値基準が正しく示されていないと全てがズレていってしまいますね。巻き込んで作る、これが基本になると思います。
こんな組織はコンサルを利用してテコ入れするのが良い
結石
自社でISOを運用されている場合、ISO事務局というのは組織内で立場が弱いケースが多いんです。管理系の部門だったりで。
会社の中では利益を生む部門が圧倒的に強いじゃないですか。なので、
「〇〇部が言うことを聞いてくれない」というお悩みをよく聞きます。
こういう組織に弊社がコンサルとして介入すると、私たちは第三者なので、忖度なく依頼したり指示したりできて非常に有効な場合があります。
池本
いいですね。
でも、本質的にはトップが変わらないと組織は変わらないですよね。
コンサルの大きな役割というのは、経営者に誰も意見を言えないところを、忖度なくモノ申すことです。遠慮せず意見を述べること。
言えない空気を無視して、ズカズカ土足で入り込んでモノを申せるのはコンサルタントだけなので、気づいていない社長には「ISO無駄になってますよ」「ちゃんとやってください」と言っていくべきですね。逆にそれがコンサルティングの醍醐味でしょう。
トップが変わると会社って変わりますよね。プロのスポーツチームや部活動チームが急に強くなるときがありますが、そういうケースってトップが交代になったときがほとんどじゃないですか?社長の見方、考え方、伝え方が変わって初めて組織が変わる可能性が出てきます。変わって一番インパクトのある社長がまず変わらないと。なのに社長はズバっと意見される機会が少ないので、言われると逆に喜ぶケースも多いです。
結石
本当ですね。
ISOの内部監査では自分達で各拠点を巡ってチェックを行いますが、毎年「不適合なし」「改善点なし」という結果で完全に形骸化しているケースもあるんですよね。監査が正しく機能していない。まさに社内忖度です。他部門にモノ申せない会社さんが多いのも事実です。
そんなときは、外部コンサルを活用して客観的に公正に評価してもらうほうが良い結果となるでしょうね。
池本
コンサルタントとしても、自分の影響力で企業が変革を遂げる瞬間を見るのが最高の喜びですよね。
結石
これからもISOのプロとしてお客様のお悩みを解消し、ご要望を叶えていきます。本日はありがとうございました。
結石
本日は、ISOの取得や運用でよく出てくる課題についてお話できたらと思います。
ISO9001取得となると、まずはじめに根幹となるミッションを決めますが、この段階からつまづいている組織が多くあります。ミッションを決めること自体も大変ではありますが、決めたところで「従業員に落ちていかない」「浸透しない」というお悩みも多いです。